コース目次 / 第0章

試食 — ブラウザの中のLinuxを歩く

インストールなしで、ブラウザの中で動く本物のLinuxを歩きまわります。

第0章 / 全5章目安 約20分この章のゴール: 「ファイルシステムは場所である」という感覚をつかむ

インストールは要りません。しかもこの章は、何をやっても壊れません。

用意するもの

ブラウザで WebVM を開いてください。本物のDebian(Linuxの一種)が、あなたのブラウザの中で動きます。アカウントもログインも要りません。

黒い画面に user@:~$ と出れば準備完了です。読み込みに少し時間がかかります。

user@:~$ は「どうぞ打ってください」という意味の目印で、自分で打つ必要はありません。この目印をプロンプトと呼びます。
ここで動いているのはあなたのブラウザの中のLinuxで、どこかのサーバではありません。何を消しても、ページを再読み込みすれば元どおりです。この章はそのつもりで、思いきり触ってください。

ひと口め: いまどこにいるか

シェルを触るときの第一の問いは、いつも同じです。「いま、どこにいるのか」。

打ってみる
pwd
こう出る
/home/user

pwd は print working directory(いまいる場所を表示する)の略です。/home/user があなたの家で、プロンプトの ~ はこの場所を指す記号です。

次に、家の中に何があるかを見ます。

打ってみる
ls
こう出る
documents  examples

ls は list。フォルダが2つあると分かりました。

ふた口め: 歩いて、中を見る

打ってみる
cd documents
pwd
ls
こう出る
/home/user/documents
ArchitectureOverview.png  WebAssemblyTools.pdf  Welcome.txt

プロンプトも変わったはずです(user@:~$ から user@:~/documents$ へ)。

プロンプトは常に「いまどこにいるか」を教えてくれています。迷ったら pwd、そして目の前のプロンプトを読む。これだけで、シェルの怖さは半分になります。

ファイルの中身も見られます。

打ってみる
cat Welcome.txt
こう出る
Welcome to WebVM: A complete desktop environment running in the browser
WebVM is powered by CheerpX: a x86-to-WebAssembly virtualization engine and Just-in-Time compiler
For more info: https://cheerpx.io

cat は「中身をそのまま出す」だけのコマンドです。もっと詳しく見たいときは -l を付けます。

打ってみる
ls -l
こう出る
total 0
-r-xr-xr-x 0 root root 367678 Jan  1  1970 ArchitectureOverview.png
-r-xr-xr-x 0 root root 265186 Jan  1  1970 WebAssemblyTools.pdf
-r-xr-xr-x 0 root root    206 Jan  1  1970 Welcome.txt

数字はファイルの大きさ(バイト)です。左端の -r-xr-xr-x は誰が何をしてよいかの札で、第4章の主役になります。いまは「そういうものがある」とだけ覚えておいてください。

家に戻ります。

打ってみる
cd ..
pwd
こう出る
/home/user

.. は「1つ上」を表す記号です。 cd だけ打っても家に戻れます。

み口め: 作って、消す

ここがこの章のいちばん大事なところです。消えても本当に困らない場所は、いましかありません。

打ってみる
mkdir sunaba
cd sunaba
touch memo.txt yotei.txt
ls
こう出る
memo.txt  yotei.txt

mkdir はフォルダを作る、touch は空のファイルを作るコマンドです。では、消します。

打ってみる
rm memo.txt
ls
こう出る
yotei.txt

何も聞かれませんでした。「本当に消しますか?」も出ず、ゴミ箱にも入りません。消えたら終わりです。
これはシェルの不親切ではなく、思想です。打った人が分かっていると信じて、そのとおりに実行する。速さと引き換えに、確認は自分でやることになっています。
だから第2章では、rm の前に必ず ls で確かめるという手順ごと覚えてもらいます。

もうひとつ試してください。自分のものではないファイルを消そうとするとどうなるか。

打ってみる
cd ..
rm documents/Welcome.txt
こう出る
rm: remove write-protected regular file 'documents/Welcome.txt'?

これは聞いてくれます。 n と打って Enter を押し、消さずにおいてください。

書き込みが禁止されたファイルのときだけ、rm は確認します。逆に言えば、自分で作ったふつうのファイルは黙って消えます。この非対称を知っておくと、確認が出たときに「あ、これは自分のじゃない」と気づけます。

リロードしてみる

ブラウザを再読み込みしてください。sunaba フォルダも、消したファイルも、全部元どおりです。

この使い捨てが試食の値打ちです。次の章からは、あなたのパソコンの本物のファイルを触ります。そこでは元に戻りません。怖い操作をここで一度やっておくのが、この章の目的でした。

この道具の性格

感じたこと シェルの考え方
いつも「どこにいるか」を意識する ファイルシステムは場所。コマンドは「いまいる場所」に対して効く
確認してくれない 打った人を信じて、そのまま実行する。安全は手順で作る
短い言葉ばかり ls cd rm。1日に何百回も打つものだから短い

ここまでで分かること

「合わないかも」と思ったなら、それも収穫です。15分で分かったなら上出来で、それがこの試食コーナーの目的です。別の言語を試すのも、まったく正しい進み方です。
「もう少し触ってみたい」と思ったなら、次の章で Linux のコマンド をあなたのパソコンに入れます。ここから先は手元に残る道具を作ります。

持ち帰りに進む前に

次の章で入れるものと、かかる時間の目安です。

内容
入れるもの Macは何も要りません(ターミナルが最初から入っています)。WindowsはWSL2(公式のコマンド1行+再起動)
ダウンロード Macは0MB。Windowsは1〜2GB
時間の目安 Macは10分、Windowsは45〜60分(ここだけOSで大きく違います。正直に書いておきます)
環境構築の重さ Mac ★☆☆ / Windows ★★☆

こうなっていればOK

卒業まであと4章です。

この章はまだ完了していません。